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ただの青年
4巻の殿下のセリフ、1番えげつないのは言うまでもなく「無用」発言だと思いますが、「母親がちがうとはいえ、兄弟とはそういうものかな」という台詞が二番目にえげつないと思います。
自分にも異母兄がいるのに、兄弟愛ってなにそれ?おいしいの?みたいな反応が白々しすぎて。
エストラード侯……(涙)となります。しかもバルがいる前で言うかと。

表面的にはドクター・リーとエルマン伯が喋ってるだけです。
5巻でこんな展開になればいいなぁという願望も多々含まれています。


『ただの青年』

それは信頼ではない。依存だ。

ドクター・リーはそう思った。
かの巨頭ジュスラン・タイタニアに依存という言葉程似合わぬものはないと思われたが、エルマン伯が聞き伝えた公爵の様子を鑑みるに、これ程相応しい言葉もないだろう。
未来を託すべき半身を失った失意の公爵、いや正確にはもと公爵か。
聡明な彼が同年の従兄弟を盲目的に“信頼”するに至った理由をドクターは知り得ない。
いや、ケルベロス星域会戦から向こうアリアバートの評価は下がるどころか、シラクサ星域の雪辱戦をはじめとしてまったくその様子を見せなかった。
それを考慮したとて、異常なことだと思う。
往々にしてタイタニアは同世代をひとくくりにして従兄弟と呼ぶ習慣があるが、ジュスランとアリアバートは母親が姉妹の、正真正銘の従兄弟である。
ジュスランは“従兄弟”のアリアバートに対して、家族の愛情を抱いていたのだろうか。
本来タイタニア一族には親愛の情が欠落しているというのが、世間一般の常識でありドクターの認識と分析によってもその通説と多くはかけ離れていないはずだった。
しかし、今回の出来事によって、どこか無機質で掴みどころがなく感じられたジュスラン・タイタニアの人間性の本質がタイタニア内部、反タイタニア陣営双方平等に叩きつけられたのだ。
特に反タイタニアの人々にとってそれは頬を横殴りにされたような衝撃だった。
タイタニアを担う巨頭としてではなく、二十代の、近しい血縁を目の前で失った一人の青年としての狂気が、鮮やかな色彩を伴って彼の悲しみを人々に強く印象付けたのだ。
天の城事変のクライマックス、アウストラの悲劇は、悲劇ではあったがこのタイタニア最高幹部を一人の人間として人々が認識するのに大きな役割を果たしたことは確かだった。

「わたしには藩王殿下のお考えがまったく分からぬ。なぜ、アリアバート卿を……」
藩王の背中越しに、モニターの向こうで繰り広げられた惨状を目撃してしまったエルマン伯は憔悴した表情を隠せなかった。
こんなことをついドクターリーに零してしまうという失態を冒し、尚且つそのことに自覚がないほど精神的に疲れ果てている。
ドクターの預かり知らぬことではあったが、エルマン伯はアリアバート・ジュスラン両公爵による分割統治を望んでいたのだから、それを目の前で絶たれた衝撃は伯爵に心理的負担を強いることになった。
そして驚くべきことに、藩王に対して今まで抱きようがなかった疑念という感情を向けるようになったのだ。
この事実はエルマン伯を大いに狼狽させ、身のうちに湧き上がる不敬な感情に目を背ける行為として、正直じいさん号への通信回線を開かせるに至った。
エルマン伯がこの海賊たちにもたらした情報は早かれ遅かれ彼らの耳に届いたことだろう。
かの悲劇の観客は、ことの内情に反して多数存在していたのだ。
エルマン伯をはじめとする藩王府の官僚達はもちろんのことAJ(アリアバート・ジュスラン)連合の幕僚、兵士達が臨席していたうえでの凶事である。
アジュマーンはすぐさまアリアバートの死を公開し、彼らの口を完全にふさぐことは出来なくなった。
さざ波のように宇宙に広がる噂と、それ以上の動揺は、正確さは求められずともたやすくドクター・リーの詮索網に引っかかることだろう。
ドクターはエルマン伯が故意に何かを隠していることに気づいていた。
いくら動揺していたとしてもエルマン伯がタイタニア貴族としてタイタニアの不利益になるようなことを話すはずがなく、多少事実が隠蔽されることは織り込み済みであったので深く追及することはなかったが、いずれその一部は流れてくる噂によって補完されるだろう。
ドクターはふと以前一度回答を断られたことを尋ねることにした。
今さら誰も覚えていないでしょうが、と前置きをして問う。
「エルビング王国攻撃の理由をあの後伯爵はお聞きになられたでしょうか?」
背後でヒューリックが軽く息をのむのが聞こえた。
問われた伯爵自身もエルビングのことをすっかり失念していたようで、少し目を見開いてすぐに得心したように頷いた。
「ああ、そうだった。そなたらは元はと言えばエルビング王国の討伐の任にあてられていたのだったな。もはやイドリス卿に従う大義もなし、聞き知ったことをそちらに話したとしてもタイタニアの不利益になるとは思えない」
エルマン伯はそこで一旦言葉を切り、微かに苦笑した。
「おおげさに隠すようなことではなかったのだよ。真実を話せば呆れてしまうだろうが、エルビング王国の第二王女をジュスラン公が気に入っておられてな、エルビング王国もろとも公の保護下に置いていたのだ。亡きアリアバート公も彼女のことを気にかけていらっしゃったと聞く」
そんなことで、という嘆息が船橋から聞こえた。
「つまり、その第二王女はジュスラン公爵の情人だったということですか」
そうまとめたドクターの言葉を伯爵はすぐさま否定した。
「いや、くだんの姫君は御歳11になられたばかりというから、それはないだろう。大変闊達だか歳に似合わぬ聡明な方らしい。人質にされることを公爵が恐れてバルガシュにも同行されていたというが、残念ながら私はお会いしたことがないですな」
「なるほど、だからイドリス卿に狙われたのですね」
ふとファンの脳裏に、2人の青年と幼い少女が楽しそうに笑う光景が閃いた。
あの美しい天の城の庭園を駆け回る少女、それを眩しそうに見つめる二人の青年、ジュスラン卿とアリアバート卿だ。
その光景は船橋のファンをひどく狼狽させた。
ジュスラン・タイタニアが見せた強烈な人間性の発露が、タイタニアを一つの組織ととらえていたのをより個人的なレベルで、ファンに知覚させた証拠だろう。
「これで答えになったかな?」
「ええ、それはもう」
ドクター本人にはそのつもりはないはずだが大変慇懃に聞こえる口調で丁寧に礼を述べる。
そのことにもはや抗議するのも諦めているのかエルマン伯は特に何を言うでもなく、簡単な辞去のあいさつをして通信を切った。
ドクター・リーは余韻に浸るように黒い画面を数瞬見つめた後くるりと後ろを振り向き、正直じいさん号の乗組員達に高らかに宣告した。

「さぁ、作戦会議(講義)の時間だ」


《終》


一体何を書いているのか途中で迷子になっていました。
そして結局迷子のまま終わりました。
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